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・元々のストーリーからしてそうだけど、基本的に大人向けの映画と言う感じであった。あと、映画の方向性としては明確な目標があってそれをクリアしたらハッピーエンド!な洋画テイストでは無くて、物語を視聴者につきつけて、後はあなた方の解釈でお願いします、な邦画テイスト。村上作品は無国籍、と言われるけれどきちんと邦画しているような印象だった。解釈を読者・受け取り手に任せるからこその無国籍性なのかもしれないけれど。
・原作読んでいる人が楽しめるか/原作読んでいない人でも楽しめるか、という質問に関してはちょっと判断が難しいなぁ。これも受け手次第かもしれない。僕個人としては、ああ、まあこんな感じか、みたいな可もなく不可もなくな感じだった。
・ちなみに、原作持ちの映画が逃れることの出来ないポイントは、やはり現れていた感じ。何かと言うと、進行巻きすぎだよ!という所と、イメージが全然違うよ!という2点。前者は時間の制約がある以上どうしようもない所ではあるし、後者も文章から浮かぶ光景はそれこそ人それぞれなのでこれもまたどうしようもない所ではあるのだけど。
・そんなどうしようも無いところに、それでも個人的な感想を言えば、直子周りがちょっと気になった感がある。時間の尺の都合からか、東京でのワタナベと直子の逢瀬シーンがダイジェスト風味ですぎてしまい、ワタナベが直子にせがまれて連発した突撃隊ジョークもカットされていたし、新海誠監督の「雲のむこう、約束の場所」から「ノルウェイの森」を知り、村上作品を読み始めるようになった身としては直子のイメージは「雲のむこう~」のサユリだったのだけど、それとはまた別方向の美人さんである菊地凛子さんが直子のキャストであることにも(主観に満ちた失礼な話とは思うけれど)違和感があった。逆に突撃隊はものすごくイメージにぴったりだったのだけど。おかしいなさっきから話が突撃隊に飛んでしまう。
・とはいえ、菊地凛子さんの演技はすごかった。ほとんど競歩な散歩の仕方や、うわずった話し方で直子の不安定な様ががっつり表現されていたし、爆発しときの様なんか鬼気迫る感じが本気で怖かった。子供が見たら泣くんじゃないかと思った。PG12だったので子供いなかったけど。
・カットと言えば、原作の冒頭にある飛行機の中の話や井戸の話がまるまるカットされているのは驚きだった。特に井戸の話は、現実にそんなものはなくて、キズキの死を引き金にどうしようもない精神的袋小路に陥った直子の心理描写->物語の最後、緑に「どこにいるの」と聞かれてとっさに答えられないワタナベは直子の死をきっかけに「そこ」に落ちてしまった、みたいな解釈でいたので、井戸が削られて緑の質問に答えられないワタナベが残る、という展開には驚き。映像化にあたって脚本に村上春樹さんが携わっている、という話を聞いたことがあるので、まぁ、そこは僕の解釈違いなのだろうけど。
・原作にあったエロスなシーンはそれなりに残っていたけれど、まぁ、今更あれを見てどうこう思うような直接描写ではなかったかな。僕自身の受け取り方がそう変化している部分もあるだろうけど。草原の中でのペッティングとか、うまく俯瞰撮影してぼかしていたけれど、あれ、子供に「あの二人何してるの?」とか聞かれたら親御さんはいったいどうするのだろう、とかどうでもいいことばかりを考えていた。いや、PG12だったから子供はいなかったのだけど。
・作品テーマに関する感想がひとつも無い/ほとんど無いのは感想記事を書くときの僕の悪い癖だけど、この作品に関しては本当に難しい。結構好きな部類の作品なのに、原作読了から今に至るまで、未だにどこがどう好きなのかを上手く文章にできないと言う。
・しかしこれ、改めて見てみるとワタナベがもう少し下半身でものごとを考えていたら、最終回でボートが浮かぶナイスボートな展開になるな。直子はヤンデレ?
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