数日続いた梅雨寒さが途切れた、少しむっと来る気温の日でした。久しぶりに感じた寝苦しさを不快に感じたのか、いつの間にか僕は眠りから覚め、暗闇に覆われた自室の天井を眺めていました。いつ頃から目を覚ましていたのかは記憶がありません。時計を見ると、丁度深夜の3時でした。
ぶーん 普段なら気にならない程度の冷蔵庫のかすかなノイズでさえ耳障りで眠気がすっかり覚めてしまった僕は布団から抜け出し、からからになった口を潤すためにキッチンへと足を向けました。
金属質の鋭い音を立てて蛇口をひねり、水道水で蛇口とシンクの間に水の柱を作ると、水切り台に洗い上げたコップを手に取りその柱から一杯、二杯と水を汲み、まるでわんこそばのように矢継ぎ早に水を飲みつづけました。しかし、水道水が酷く温いせいか、一向に喉の渇きが癒えません。背後では、まだしつこく冷蔵庫が
ぶーんとノイズを発しつづけています。その五月蝿い冷蔵庫の扉を開けても何も渇きを抑えられるようなものはありません。
一向に収まらない喉の渇きと、それを馬鹿にするような冷蔵庫のノイズに腹を立てた僕は、冷たい飲み物を求めて、深夜のコンビニへと出かけることにしました。
そして、軽く身支度を整えて玄関へと向かい、スニーカーに足を通したその時です。
かさっ どこからとも無く、音が聞こえてきました。まるで、フィルム質の紙を丸めた時の音、とでも言えばいいでしょうか。丁度プラスチックごみ回収の前の晩でしたので、最初は溜まったプラごみの一部がバランスを崩したのかと思い、さして気にもとめませんでした。
かさっかさかさっ しかし、再び音が聞こえたので振り向いてゴミ袋を確認したのですが、ごみがバランスを崩したような様子はありません。そして、音はもっと身近なところで聞こえてきました。そう、玄関に腰掛け、スニーカーを履いている僕の、すぐ近くから。
扉の上に設けられたガラス戸から漏れ出す街灯の明りで淡く照らされた玄関の中、注意深く身の回りをさぐってみると、スニーカーを履いた左足のつま先に何か違和感があることに気がつきました。
何だ靴の中に入り込んだプラごみに気づかずに靴を履いたから音がしたのか、と思った僕はスニーカーを脱ぎ、つま先に詰まったゴミを片手でつまんで取り出しました。
結論から言えば、それはただのごみではありませんでした。靴の陰から現れた僕の指がつかんでいたもの、それは…
ぎにいゃあああああああああああああっ!!!!!◆
一部脚色を含んでいますが、ほぼ実話です。って言うかマジでビビリました。今でもつま先から彼奴の感触が消えません。
PR