僕の日参ブログ、『
ランゲージダイアリー』さんの管理人、あいばさんの手による創作小説『陽菜子さんの容易なる越境』の感想です。読んでいない人には楽しめない仕様になっている(と思う)ので、本編未読の方はお先にランゲージダイアリーさんでPDFを
ダウンロードして読んでください。本編既読の方は原作の雰囲気をぶち壊している可能性があるので気をつけてください。と言うかいつも通りにやっていたら一部でアレな事になりましたあいばさんごめんなさい。
◆通して 描写されている様々なキーワードがブログから伝わる相羽家のそれと酷似していることから、主人公・キコの家族はあいばさんの家族がモデルなんじゃないかと思われます。と言うか紀之兄さんはあいばさん本人がモデルなんじゃないかと思います。筆者個人の体験・境遇・環境をモデルにしてそこからそのまま作劇、或いはそこに若干のエッセンスや筆者の望みのようなものを交えて作劇するスタイルですね。
つまり女子高生の妹が欲しかったんですねあいばさん!(違
ええと、まあ、そういった作劇は個人的には好きなパターンです。筆者の考えがストレートに表に出るスタイルですし。
タイトルにもある『越境』が作品のキーとなっていますが、この、越えるべき境、と言うか壁が作中ではクワドラント、つまり社会的な生き方の相違として描写されています。そして、その壁を乗り越える行為、或いは乗り越えることで生じる変化に惹かれながらも戸惑いを隠せないキャラクターとして、キコが。彼女とは逆に億面無く壁を越える勢いを持った(その姿がさらにキコを不安にさせているのだけど)キャラクターとして陽菜子さんが。そして、既に壁を越えてしまった経験者的キャラクターとして紀之兄さん(+その他大勢)が。と、大分すると越境の過渡期に居るキャラと過渡期を過ぎて定常状態に居るキャラが存在しています。
別の見方をすればこれは、過渡期にあった過去のあいばさん本人(或いは読者、はたまた或いはこれから過渡期に身を投じる読者)の映し身としてのキコ、過渡期を過ぎて余裕も生まれだした現在のあいばさんの分身としての紀之兄さん、そして、経験者視点から見て、壁なんて無いに等しいと思えるようなものの考え方を持ったキャラとして過渡期のキャラ(キコ)の隣に置かれた、エッセンスとしての陽菜子さん、と言った感じでしょうか。
過渡期に居て、いくつかの迷いを持っている少女が定常状態に在るキャラクター達との対話を通して、迷いを持たない少女との交流を通して自分の新しい居場所を探すまでの物語。かつての自分への、今の自分と今の自分が理想とする存在からのメッセージ。これから居場所を決める読者、今の居場所を決めた頃の読者への、筆者からのメッセージ。キャッチコピー、
あなたがいる場所を、決めた頃のあなたへ
に偽りなし。そんな小説でした。
少女小説自体は未踏なジャンルなのでスタンダードがどこにあるかは知らないのですが、前評判通り、確かにほわほわした小説でした。普段非常に複雑な問題を抱えた人や愛憎の果てに殺意に目覚め行き着いた先でまた愛に溺れる人や硝煙とエロスにまみれた世界に生きるキルマシーンな人が出てくるような殺伐とした小説ばっかり読んでるのでかなりの癒し効果です。いきなりビジネスの話とか入ってきたんで、確かに、『少女』小説としてはその辺どうなのかってのはありましたけど(笑)。ビジネスの話をキーの一つにした少女小説じゃなくて、ビジネスの勉強を始めたビギナー向けにかわいい女の子がイチャイチャして解りやすく説明する小説でもいけるじゃん、みたいな。
◆シロクマとか シロクマが本編のそこかしこに出張ってるって言うか影の主役になってるって言うかもうシロクマが主役でいいんじゃない?みたいな感じでシロクマだらけの小説でした。て言うかシロックマて!シロックマーて!
彼をご存知の方には言うまでも無く、シロクマはあいばさんのイメージマスコット
と言うか本体な訳で(本体はパンダ説もあり)、シロクマと言えばあいばさん、あいばさんと言えばシロクマな訳なので、シロクマの話題が出てくるたびに頬を緩ませながら読んでいたのですが、この作品の出自からよくよく考えてみたらそう言った件をまったく知らないコバルトの審査員の方々にそんな内輪ネタをしこんだ小説を提出していたことになるのでその辺りが一番のツボでした。周りの人間にはよく笑いのツボがずれていると言われます。
しかしここまでシロクマ全開の小説を読んでしまうと、この先、あいばさんの小説にシロクマの毛皮を全身に身にまといシロクマ的なものの考え方をするシロクマ男や彼を目の敵にするシロクマ博士、シロクマをめぐる冒険に身をやつす主人公なんかが出てきたりするんでしょうか等といったいらん期待を抱いてしまいます。やれやれ。
◆その他・何をやるにしても楽しんでやる、どこに行くにしても楽しいことが待っていると思えるのなら大丈夫、作中で語られた越境の精神が、僕が就職活動で体感した事とシンクロしてて微妙にハッスル。
・ヨシエシホちゃん3歳です!ビジネスオーナーです!みたいな事は平気でやってくれるような気もしましたがリアル路線でした。残念。
・ビジュアル的には陽菜子さんよりキコちゃんの方が好みです。霧生さんの奥付イラストでのウサ耳を前に戸惑う表情にやられました。
参考:
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ランゲージダイアリー・
Language×Language・
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