◆本編絡み語り 正に「破」な感じでした。
既存の物語を踏襲していた「序」に比べて(比べるまでもないけれど)これでもか、というくらいのオリジナル展開で10年前のエヴァンゲリオンという物語を壊したと言う意味での「破」。苦しみながらも順調に前へ進んでいたシンジの物語・心・他者との関係が全て壊されてしまった、という意味での「破」。そして、自らの純粋な願いのために人間の限界を突き「破」る、という燃え展開でイジけキャラとして固定されていた(笑)自分のキャラクターをも壊しにかかるシンジ、という展開での「破」。
それが駄目だとか嫌だとかそーゆー話をする気は毛頭なく、むしろどれもこれもが満足感たっぷりで見終わった時にはもうお腹(というか頭)いっぱいな映画でした。特に自らを壊しに行ったシンジのくだりが凄くて、というか
僕間違ってグレンラガン見に来ちゃったのかしらとか思うぐらい螺旋力溢れる熱い展開で、レイをゼルエルの胎内から引きずりだした瞬間にはもうかなりテンション上がっていたと言う。
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前作のラストでも今作のラストでも顕著だったけれど、
お前は劇場版のジャイアンか、とツッコミ入れたくなるような漢気溢れるシンジが新劇場版の燃えどころなんだと思うのですよ。
「人類」という、顔の見えない大勢の匿名の人々のために戦う事の崇高さなんか分からないけれど、自分を応援してくれるトウジやケンスケ、自分を信じてくれるミサトさん、そして自分を護ってくれているレイのためなら戦えるとばかりに死の恐怖に怯えながら銃を手にした「序」のラスト。そして「破」のラスト。アスカとの関係を直接的に奪った父や間接的に奪った自分を許す事は出来ない、だからもうエヴァに乗る事はしたくなかったけれどまた眼前から大事なものが失われようとするのなら戦う。ただ取り返すためだけに戦う。「綾波を返せ」と吼えながら戦う。大多数や世界全体のことなんかどうでもいいけど、目の前の大事な人、敢えて言うなら心の友(笑)のためなら漢になるのが新劇場版のシンジ。
平時はTV版や旧劇場版のように受動的な側にスイッチが入ってはいるのだけど、そしてクライマックス前には受動的な側に思いっきりスイッチ倒れている(ただ流されるままに乗っているから「人類のため」とか言われてもピンと来ないヤシマ作戦前、アスカを助けたいという願いのために「何もしない」ことを選択してしまった3号機戦)のだけど、最終的には能動的な方に反転するという。そのためのトリガが自分と近しい人々だという。そこに溢れるカタルシス。それこそが新劇場版の燃えポイント。
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何か得たいものがあるなら受動的に生きないで能動的に生きろ!と草食系男子全否定(笑)なメッセージが見えたりな演出ですが、能動的な生き方というのは行き過ぎれば(そしてネガに見れば)自己の押し付け。
「破」のラストでも、シンジはただレイを救いたいという願いのためだけに行動したのにその結果、世の理を捻じ曲げて世界を滅ぼすサードインパクトを誘発する(そこまで能動的にならんでも!)ことになってしまったというネガティブ展開に。この受動/能動のポイントがQでどう料理されて決着するのかが楽しみです。
◆序と破とQ 劇場版のタイトル、「序」の次が「破」だと初めて聞いたときはそれこそ「ハ?」な感じだったのですが、よくよく調べてみると「序破急」って楽曲を構成する三つの要素を指す言葉のようで。
情報源は忘れたのだけど、3作目のタイトルが「急」だというのは知っていたので今回の次回予告はある程度構えていられたのだけど、まさかのアルファベット表記にふいてしまった。「Q」て。何でそこでいきなりアルファベットになるんだと。いやまぁQ = Quickening = 速める・急がせるなので「急」の意味は失ってないけど。Quickeningには生き返りとか胎動とかの意味もあるので、破で様々なものを喪失したシンジ・レイ・アスカの物質的/精神的な復活と引っ掛けたタイトルでもあるのかな。
そして「Q」の公開までは後何年待たなければならないのだろう。また2,3年スパンだとすれば次の公開時にはガチで加持さん世代になってしまうなぁ、僕。
◆歌とか 仮設5号機戦闘時にマリが「365歩のマーチ」を歌いだした時点では
ギャグだと思っていたのだけど、3号機事件クライマックスの「今日の日はさようなら」とレイ救出時の「翼をください」にはしてやられた。あれはずるい。
変わらぬ友情を誓う歌をバックに繰り広げられる、シンジとアスカの友情を蹂躙するかのような使徒とダミープラグに支配された戦闘。そのショッキングな映像や夕暮れ時特有の切なさや凄惨な事件の後ろに流れる綺麗な歌声に涙腺刺激されまくりでした。
「今日の日はさようなら」は友情を歌いながらも今後逢えるとも分からない別れを示唆する歌なので漫画版含む「破」とは異なる世界の3号機事件の結末を知っている旧作からのファンとしては、ア、アスカ死ぬの?そんな非道い役回りなの?だから苗字変えたの?とかいらん邪推してしまったり。
一方のレイ救出時。可能性の拡張を欲する歌をバックに、人としての可能性を越えてレイを救おうとするシンジに今度は鳥肌がぞわっと来たり。
人を超えて翼を持つもの=天使にその存在を昇華させ、ゼルエルを圧倒するシンジ=初号機という展開に燃えつつも、あの世界的に天使=使徒=敵な訳でいくら願いのためとは言えそれはアリなの?というかサードインパクト起きそうになってるんですけどそれはアリなの?「悲しみのない大きな空」ってのは原罪のない世界・サードインパクトにより全人類が滅ぶ世界なの?と思わせたところでカヲルくん登場。ロンギヌスの槍(?)で初号機の覚醒をストップ。「歌」によって勢いづいた初号機を止める役が「歌はいいね」とか言っていたカヲルくんとかパンチの効いた演出で次回へ続く。
ホントにこの一連の流れはずるい。ずるいぐらいに来るものがある。
◆その他細々としたツッコミ・精神世界で、愛用しているウォークマンが父の持ち物だったこと、不要になったから置いていったことを話した後に「僕と同じなんだ」とか言い出した辺りで不覚にも笑ってしまった。誰がうまい事を言えと。
・アスカが持ってた携帯ゲーム機、あの起動音はまさかのワンダースワンですか。何で今更ワンダースワンですか。
・「始めまして、お義父さん」とか「今度こそ君を幸せにしてみせる」(うろ覚え)とか、カヲル君の発言がいちいちアレっぽくて笑ってしまった。というか「お父さん」が即時脳内で「お義父さん」に変換されてしまった僕は一体何だ。
・3号機事件の後、シンジが初号機を占拠してピラミッド状のネルフ本部施設を踏みつける図。旧劇場版にあった、幼少期のシンジが砂場に作ったピラミッドを踏みつける図と被って見えた。あれはあれで自分を捨てた父へのあてつけに、父の大事なもの(=仕事→職場→ネルフ型の砂山)を蹂躙する描写なのだけど・・・
・というか3号機事件の後、葛城家を出て行こうとするシンジにミサトさんが携帯を差し出しつつ「鈴原くんと相原くんが心配してた」的な事を言っていましたが・・・ケンスケ・・・ミサトさんに名前間違って覚えられてるよ。
・見えすぎじゃない?なアスカのプラグスーツを見て、「ああ、インナーね?その方が殿方にウケるのよ」という解説をかけるリツコさんが僕の脳内に現れた。旧劇場版の前売りチケット特典ドラマCDとか、ネタとしてついて来れる人がどれだけいるのだろうか。
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