学校で。先生から修士論文提出までの約10週間のスケジュールを提出するよう言われた。
10週間。
口にしてしまえばなんともあっけなく終わってしまう感のある残り日数。たったこれだけの日数で小学校に入学してから、今年まで、18年間続いた僕の学生としての時間が終わってしまうのだ。
別に学生としての身分に固執しているわけではないし、別に学生としての身分を失うことを嘆くわけでもないけれど、それでも。何かどこかで。物悲しさやら物足りなさやらその他上手く口に表せない感情が渦巻いているのを感じる。そしてそれは、達成感とかそう言った類の感情以上に、僕を揺さぶる。
可笑しな話だ。今居る場所に踏みとどまるのが辛くて、苦しくて、逃げ出したくなる感情と戦った夜を何度か過ごしたくせに。いざそこから追い出されるまでのリミットを数字で見せられただけで今度は後ろ髪を引かれる思いになるなんて。
どんなにつまらなくて、くだらなくて、快より不快の方が多くても、本当に失う寸前になれば分かる。それがどれだけ大事だったか。
楽しいことばかりではなかったけれど、僕は僕の居場所がどうしようもなく好きなのだ、と。
灯台の下、隣の芝生、青い鳥。知っている。人は身近な大事なものに気づけない。どこかにあるとは思っていても、それに気づくのは失いそうになった時か、完全に無くしてしまってから。解っていた。けれどそれでも気づくタイミングはやっぱり変わらない。情けない。
勿論、学生から社会人になるだけで僕と言う個人や(良い事か悪い事かは知らないけれど)僕の思想がディジタルに変わるわけでは無いし、ましてや消滅してしまうわけでは無いのだから、別段悲観する問題でもない。気づけないだけで大事なものは確かにあるのだと、どこに行っても思えるのなら。
でも、それでも。僕の学生としての時間と、いくつかの人間関係は途切れて、失われる。望もうと、望むまいと。後、10週間で。
10週間。
あと10週間あれば何が出来るだろう。あと10週間で何をやろう。まだそれが何なのかよくはわからないけれど、何かが失われる前に。本当に大事なものを失わないために。
当然、卒業するために研究は収束させなくてはならないし、論文を書かなくてはならない。論文を書くためには後ひとつふたつ結果を出す必要があるから、そのための準備もしなくてはならない。
それ以外にやりたい事、やれる事。
伝えなくてはならないこと、果たさなきゃならない約束、そして、先延ばしにしてきた結論。悔いを残さないように、しめることはしめなくてはならない。どうせ後悔するのなら、出来なかったことよりも、やってしまったことを後悔してやる。
だから、後10週間。
僕は全力でやりたいことを、やれることをやろうと思う。
残り10週間。
取り敢えず、
ジャンプは10冊買える。※(注)
合併号があるので、10冊は買えません。
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